無痛分娩だと陣痛促進剤を使うの?現役助産師が理由と実際を正直に解説

無痛分娩

陣痛促進剤は、無痛分娩に限らずよく使われるお薬です。名前を聞いたことがある方も多いと思います。

ただ、無痛分娩では使う場面がぐっと増えます。計画で日にちを決める場合はもちろん、自然に陣痛が来てから無痛にした場合でも、たいていは使います。

なぜ使うのか。使っている間、私たちが何を見ているのか。断ることはできるのか。現場から正直に書きます。

📊 どのくらいの人が使うの?

私の実感では、こんな感じです。

  • 計画無痛分娩(日にちを決めて陣痛を起こす)の方:ほぼ全員
  • 自然に陣痛が来てから無痛にした方:9割くらい

「自然に陣痛が来たなら、促進剤は要らないのでは」と思われるかもしれません。でも実際は、そちらでもほとんどの方が少しは使います。

なので、無痛分娩を選ぶ=促進剤を使うと思っておいてもらえたらと思います。

💡 なぜ使うの?理由は2つあります

① 陣痛を起こす必要があるから

計画無痛分娩では、日にちを決めて入院します。その日に陣痛が来ているとは限らないので、こちらから陣痛を起こします。ここでは促進剤がほぼ必須です。

② 無痛にすると、陣痛の間隔が延びやすいから

自然に陣痛が来て入院した方でも、無痛を始めると陣痛の間隔が延びてくることがよくあります。

子宮口が全部開くところまでは自然の陣痛で進んでも、そこから赤ちゃんが出てくるまでに時間がかかりすぎると、ママも赤ちゃんも消耗します。

それを防ぐために、最後に少しだけ使う——というケースが多いです。

🤔 正直に言うと、私も昔は疑問でした

ここは正直に書きます。

自然分娩がメインの病院やクリニックで働いていたころ、「計画的に陣痛を起こす」ということに、とても違和感がありました。

予定日を過ぎているなら分かります。でもまだ38週や39週で、人工的に陣痛を起こせるものなのか——そう思っていました。

今のクリニックで働きはじめて、意外と起こせるものなのだと知りました。

ただしお薬だけでは限界があります。だから、バルーン(風船のような器具。ミニメトロなど)を子宮の中に入れて、機械的な刺激でお腹を張らせたり、子宮口を広げたりします。そうすると、そのあとの促進剤の効きがよくなります。

とはいえ全員がうまくいくわけではありません。
あまり反応しない方も、体感で1割くらいはいます。

📖 研究では「39週で陣痛を起こすこと」はどう見られている?

私が昔感じていた違和感について、大きな研究があったので調べました。

2018年に発表された、大きな研究があります。初産で、リスクの少ない6,106人を対象にしたものです。39週で陣痛を起こすグループと、41週まで自然に待つグループに分けて比べています。

結果はこうでした。

  • 帝王切開が減った(39週で起こしたほうが少なかった)
  • 赤ちゃんの状態は悪くならなかった
  • お母さんが感じる痛みも、むしろ軽かった

「陣痛を待たずに起こすのは自然に反するのでは」——その気持ちは、私にもよく分かります。

でも研究の上では、不利になるとは言われていません。
むしろ良い面のほうが多い、という結果でした。
自然分娩が好きな私にとっては、とても意外でした😅

🏥 私の職場では、こう進めています

ここから先は、あくまで「私の職場ではこうしている」という話です。産院によってやり方はかなり違うので、そのつもりで読んでもらえたらと思います。

計画無痛分娩の場合、だいたいこんな流れです。

  • 前日:バルーンを入れて、子宮口を広げていきます
  • 翌日の早朝:飲み薬(プロスタグランジン)を、時間をおいて少しずつ
  • その後:点滴(オキシトシン)に切り替えます

点滴はごく少ない量から始めて、少しずつ増やしていきます。ただ、決まった通りに増やすわけではありません。

陣痛の間隔や痛みの様子を見ながら量を調整し、ガイドラインで決められた範囲を超えないようにしています。

👀 使っている間、何を見ているか

見ているものは、無痛を始める前も後も、基本的には同じです。

  • 陣痛の間隔は正常か
  • 陣痛の強さと長さは十分か
  • 赤ちゃんは元気か

ただし、ひとつだけ大きく変わることがあります。
無痛を始めると、痛みがなくなるということです。

普通のお産では、ママが感じる痛みが手がかりのひとつになります。「痛すぎる」という訴えが、陣痛が強くなりすぎているサインになることもあります。

無痛分娩では、その手がかりがなくなります。

だから無痛を始めたあとは、より注意しながら見ています。

ただ、機械だけを見ているわけではありません。陣痛の評価は、いくつかを組み合わせて行っています。

  • 機械(分娩監視装置)で、陣痛の波と赤ちゃんの心拍を見る
  • お腹をさわって、張ったときの硬さを確かめる
  • 内診で、子宮口の開き具合や赤ちゃんの下りぐあいを確認する

機械の波形だけでは、有効な陣痛かどうかは分かりません。
波は出ていても、お産が進んでいないこともあります。

だから「機械の波形」「お腹の硬さ」「お産の進み具合」の3つを合わせて、いまの陣痛でちょうどいいのかを判断しています。

😶 ママはどう感じますか?

麻酔で痛みがしっかり取れていると、変化を感じない方もいます。

ただ、お産が進んでくると陣痛も強くなるので、痛みが出てくることがあります。

私たちは、急に痛みを訴えられたら「進んできたな」と思います。
お産が進んだサインであることが多いからです。

(ほかに、赤ちゃんの向きの問題で痛みが出てくることもあります)

😨 「促進剤ってこわい」と言われること

使う前には、必ず医師から説明があります。そのため、強い不安を訴える方はあまりいません。

ただ、「子宮破裂」という言葉を聞いて怖がる方は、たまにいます。陣痛が強くなりすぎたときに起こりうるもの、として説明されるからです。

その答えが、ひとつ上の章に書いたことです。そうならないように、ずっと見ています。それが私たちの仕事です。

🙅 使わない選択はできますか?

できます。無理に投与することはできませんので、断ることは可能です。

ただ、正直に書きます。私たちはなるべく使う方向でお話しします。

理由は、使わないと何時間かかるか分からないからです。長引けば、ママも赤ちゃんも消耗します。だからメリットをしっかりお伝えして、納得してもらえるように説明します。

それでも「どうしても使いたくない」という方に、無理強いはしません。ただ、その場合はそのぶん時間がかかることを、受け止めてもらうことになります。

👶 赤ちゃんへの影響は?

促進剤そのものが、赤ちゃんに直接影響するわけではありません。

気をつけているのは、陣痛が強くなりすぎたときです。

陣痛の回数が多すぎたり、強すぎたりすると、赤ちゃんの心拍が落ちることがあります。これは時々あります。

そして、赤ちゃんの体力が落ちていると、少しの負担でも回復しきれないことがあります。そのときは、緊急の帝王切開になったり、吸引・鉗子分娩で急いでお産を終わらせたりすることもあります。

吸引・鉗子分娩については、こちらに詳しく書いています。
▶ 無痛分娩だと吸引分娩になりやすい?現役助産師が実感と研究の両方を正直に解説

✅ まとめ

  • 無痛分娩では、促進剤を使うことがほとんどです。計画ならほぼ全員、自然陣痛からでも9割くらい(私の実感)
  • 理由は①陣痛を起こす必要があるから ②無痛にすると陣痛の間隔が延びやすいから
  • お薬だけでは限界があるので、バルーンを併用します。それでも反応しない方が1割くらいはいます
  • 研究では、39週で陣痛を起こしても帝王切開は増えず、むしろ減ったという結果が出ています
  • 無痛では「痛すぎる」というサインが届きにくいので、機械でしっかり見ています
  • 断ることはできます。ただ、そのぶん時間がかかることは受け止めてもらうことになります

促進剤は、こわいものというより「見ながら使うもの」だと思っています。

知らないまま当日に説明されるより、先に知っておいてもらえたら——そう思って書きました🌷

👉 無痛分娩について、ほかにも記事を書いています。全部まとめたページはこちらです。
【無痛分娩ガイド】現役助産師が答えます|費用・流れ・不安のすべて

この記事の感想やご意見は、コメントで聞かせてもらえるとうれしいです😊(個別の医療相談にはお答えできませんので、心配なことは必ずかかりつけの産院にご相談くださいね)

助産師Fujiちゃん

助産師/看護師。関西出身、関東在住。看護師・助産師の免許を取得後、産婦人科の臨床現場で18年間、たくさんの妊婦さん・ママたちに寄り添ってきました。現在は無痛分娩を行うクリニックに勤務中。プライベートでは6人の子どもを出産し、子育て中です。病院の限られた時間では伝えきれない「本当に知ってほしいこと」を、現場の本音とともに発信しています。

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