「産後、おしっこが出にくい…」「尿意が全然ない」——無痛分娩を経験したママから、こうした排尿トラブルの相談をよく受けます。実は、無痛分娩は自然分娩に比べて産後の排尿トラブルが起こりやすいのは本当です。でも、多くは一時的なもの。なぜ起こるのか、現場では何をしているのか、現役助産師が正直に解説します。
🚽 産後の排尿トラブルには2タイプある
ひとくちに「排尿トラブル」と言っても、大きく2つのタイプがあります。無痛分娩で特に増えるのは①の方です。
- ①尿が出にくい・出ない(尿閉・排尿困難)…無痛分娩で増えやすい
- ②尿が漏れる(尿失禁・尿漏れ)…無痛分娩に限らず出産全般で起こる
💉 なぜ無痛分娩で「尿が出にくく」なるの?
無痛分娩で使う硬膜外麻酔は、痛みだけでなく膀胱の感覚も鈍らせます。通常、膀胱に200mLほど尿がたまると「トイレに行きたい」と感じますが、その感覚が届かなくなります。
☝️ つまり、麻酔そのものの影響+分娩が長引きやすいことが重なって、無痛分娩では産後の尿閉が起こりやすくなります。
👀 現場で感じる、自然分娩との「圧倒的な違い」
ここからは、助産師として現場で見てきた実感をお話しします。統計ではなく、あくまで私が経験した範囲の話として読んでください。
自然分娩を扱う病院で18年働いてきましたが、産後の入院中に本当に自尿が出なかった方はたった1人でした。
一方、無痛分娩を行う施設で働き始めてまだ2年あまりですが、尿閉になった方はすでに数人います。この差は、正直かなり大きいと感じています。
一番違うと感じるのは、やはり尿意の有無です。麻酔が切れても尿意が戻るまでに時間がかかり、自分でスムーズに出せるようになるまでにも時間がかかる印象があります。入院中、まったく尿意が戻らない方もいます。
🏥 病院ではどう対応している?
まず「分娩中」の導尿
無痛分娩中は麻酔で尿意がわからなくなるため、こちらで定期的に尿を出してあげる必要があります。当院では日中は3時間ごとの間欠導尿(その都度、管を入れて出す)が基本です。
ただし、夜間に無痛分娩を開始した場合や、日中に始めてもお産の進行がゆっくりで長引きそうな場合には、夜間だけ膀胱留置カテーテル(管を入れたままにする)を使うことがあります。
なぜ、ずっと入れっぱなしにしないの?
「それなら最初から入れっぱなしの方が楽では?」と思うかもしれません。でも長時間の留置には、こんなリスクがあると考えています。
☝️ これは私自身が現場で感じていることで、施設によって考え方や方針は異なります。
実際、日本産婦人科医会の資料では「硬膜外麻酔を使う場合は尿道カテーテルの留置を積極的に検討する」とされています。つまり「入れっぱなしにする」方針の施設もある、ということです。
どちらが正解ということではなく、お産の進み方・スタッフの人数・その施設での経験の積み重ねによって最適なやり方は変わります。もし他の病院で当院と違う方法をとられても、心配しないでくださいね。気になることがあれば、その場で「どうしてこの方法なんですか?」と聞いてみるのがいちばんです。
次に「産後」の管理
赤ちゃんが生まれたあとも、排尿のチェックは続きます。ここからは、当院で実際に行っている産後の流れをお話しします。
⏰産後3時間ごとにチェック
産後は3時間ごとに「尿意があるか」「自分で尿が出せているか」を確認します。出ていない場合は超音波で膀胱に尿がたまりすぎていないかを見て、必要なら導尿(細い管で尿を出す)を行います。
😖正直に言うと、産後の導尿は痛い
ここは正直にお伝えします。無痛分娩中の導尿は、麻酔が効いているので痛みはありません。でも産後は違います。麻酔が切れているうえ、会陰や尿道口のまわりに傷がある状態なので、導尿がかなりの苦痛になります。
私たちもできるだけ優しく、痛くないように行いますが、どうしても力が入って足を閉じようとしてしまうママも多く、まったく痛みなく…とはいかないのが実際のところです。申し訳ないなと思いながら処置しています。しかもこれを3時間ごとに繰り返す必要があります。
🔚残尿測定はいつ終わる?
私のクリニックでは、排尿後の残尿が100mL以下を2回続けてクリアできたら残尿測定を終了、という基準にしています。ただし、このあたりのやり方は施設によって違うと思います。
☝️ ちなみに日本産婦人科医会の資料でも、残尿150mL以上なら導尿、100mL未満になるまで管理を続ける、3〜4時間ごとに排尿・残尿測定を継続するとされています。当院のやり方もこれに沿ったものです。
なお、産後に膀胱を休ませる目的で膀胱留置カテーテルを使う施設もあります。私が以前働いていた病院では行っていましたが、今のクリニックでは産後の留置は行っていません。ここも施設ごとに方針が分かれる部分です。
⚠️ 「出ているつもり」が一番こわい
初回の排尿で、尿意がなくてもしっかり出せていれば、その後も概ね大丈夫なことが多いです。
ただ、気をつけたいのが「本人は出せているつもり」のケース。退院前の診察ではじめて残尿が多いことがわかり、そこから残尿測定・泌尿器科の受診になった方もいます。
☝️ 「なんとなくスッキリしない」「出た量が少ない気がする」——そんな違和感があれば、遠慮なく助産師に伝えてください。
💧 「尿漏れ」はなぜ起こる?
もう一方の尿漏れ(尿失禁)は、無痛分娩に限らず出産全般で起こります。妊娠・出産で骨盤底筋(膀胱や子宮を支える筋肉)がダメージを受けて緩むことが主な原因です。くしゃみ・笑った時・重いものを持った時などに漏れやすくなります。
⏰ いつ治るの?
🏥 退院後のフォローは泌尿器科へ
退院しても排尿の問題が続く場合、フォローは泌尿器科に移ることが多いです。私のクリニックが紹介している泌尿器科では、次のような対応をしています。
「産婦人科じゃないの?」と驚くかもしれませんが、排尿は泌尿器科の専門分野です。適切なところで診てもらうのが回復への近道になります。
🌿 自分でできるケア
骨盤底筋トレーニング(肛門や膣をキュッと締めて緩める運動)は、尿もれの回復に効果的です。当院では尿もれの訴えがあれば個別に指導していますが、全員に一律で行っているわけではありません。
☝️ 個人的には、できるなら産後の早い時期から始めた方がいいと思っています。施設によっては産後2〜3日目の退院指導で説明しているところもあります。気になる方は入院中に助産師に聞いてみてください。
🚨 こんな時は相談・受診を
💌 まとめ
排尿トラブルは恥ずかしくて言い出しにくいかもしれませんが、産後にはとてもよくあることです。私たち助産師は必ず排尿をチェックしていますので、ひとりで抱えず気軽に相談してくださいね🌸
📖 参考
👉 無痛分娩について、ほかにも記事を書いています。全部まとめたページはこちらです。
【無痛分娩ガイド】現役助産師が答えます|費用・流れ・不安のすべて
日本産婦人科医会「39.経腟分娩後の尿閉の対応は?」



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