産後の骨盤ケアって必要?「とりあえずベルト」でいいのか、現役助産師が正直に書きます

産後

産後の骨盤ケアについては、本当にいろんな情報があります。「締めないと戻らない」「歪んだままになる」「今のうちにケアしないと一生このまま」——。

先に書いておきます。私は骨盤ケアの専門ではありません。正直、「これが正解です」と言い切れるほど詳しくないです。

だからこの記事では、分かっていることと、分かっていないことを分けて書きます。

🦴 「骨盤が開く」は本当?「歪む」は?

よく聞く言葉ですが、この2つはまったく別の話です。分けて書きます。

「開く」は、本当です。ただし数ミリの話です。

恥骨のつなぎ目(恥骨結合)は、妊娠していないときで4〜5mm。それが妊娠後期には7mmくらいまで広がります。ホルモンの影響で、じん帯や軟骨がゆるむからです。赤ちゃんが産道を通れるようにするための、必要な変化です。仙腸関節(お尻の上のほうの関節)も、動きが大きくなります。

なので「骨盤がゆるむ」は正しいです。私も現場では「開く」ではなく「ゆるむ」と説明しています。

ただ、世間で言われる「骨盤がガバッと開く」というイメージとは、規模が全然違います。数ミリです。

(ちなみに10mmを超えると「恥骨結合離開」という病気です。産後に恥骨がひどく痛くて歩きにくいときは、これのことがあります。がまんせず産院に相談してください)

そして——産後は、放っておいても戻ります。

多くの報告で、3ヶ月以内にほぼ元どおりに閉じているとされています。特別なことをしなくてもです。長く残る後遺症も、はっきりしたものは確認されていません。

つまり「締めないと戻らない」という前提が、そもそも成り立っていません。

一方で「歪み」のほうは、はっきりした根拠がありません。

左右差そのものは測れます。でもそれが不調の原因だと証明されているわけではありませんし、「矯正すれば治る」という裏づけもありません。

「開く」は数ミリの生理的な変化。「歪み」は、そう言われているだけ。——ここは分けて考えたほうがいいと思っています。

🤔 骨盤ベルトは効くの?——はっきりしていません

ここはごまかさずに書きます。

骨盤ベルトの効果を調べた研究をまとめたものはあります。でも結果のばらつきが極端に大きくて、「効いた」とも「効かなかった」とも言えない状態でした。研究者自身が「根拠は弱い」と書いています。

私自身も、6人目のときにベルトを使いました。でも正直、効果があったのかはよく分かりません。ただ、昔あった腰痛は、いつの間にかなくなっていました。それがベルトのおかげかどうかは、分かりません。

ベルトが悪いという話ではありません。一時的に楽になる方はいると思います。
ただ「締めれば戻る」を裏づける根拠は、いまのところ弱い——それが事実です。

🏥 私の職場でしていること

ここから先は、あくまで私の職場での話です。産院によってかなり違うと思います。

  • ベルトを持ってきた方に、締め方と位置をお伝えします。
    脚の付け根の外側にある、出っぱった骨(大転子)のあたりを締める位置です
  • ベルトそのものをこちらから強く勧めることはしていません
    産院によっては販売しているところもあります
  • 「整体や整骨院に行ってもいい?」と聞かれたら、「退院後、行きたければどうぞ」とお答えしています

💡 でも、「とりあえずベルト」でいいのか

ここが、いちばん書きたかったところです。

産後の恥骨の痛みや腰痛に「とりあえずベルト」と言う助産師は、多いと思います。私も含めて。

なぜかというと——それがいちばん簡単だからです。

ベルトが悪いわけではありません。一時的には楽になるかもしれません。
でも根本的な解決ではありません。

そしてベルトは、いつかは卒業しないといけないものです。
その卒業の時期や目安まで伝えられないなら、あまり意味がないと思っています。

本当は、妊娠中から産後にかけての腰痛や体の不調は、継続的に診てもらうのがいちばんです。
でもいまの産科の体制では、そこまでは難しいのが現実です。

これは私自身への反省でもあります。

✅ 根拠がはっきりしているのは、骨盤底筋のほうです

「締める」ことの根拠は弱い。一方で「動かす・使う」ほうには、ちゃんとした結果が出ています。

産後の尿もれは、3人に1人が経験するといわれています。そして妊娠中から骨盤底筋のトレーニングをしっかりやると、産後6ヶ月までの尿もれが減るという結果が出ています。

私の職場でも、尿もれの訴えがあれば指導します。やり方はシンプルです。

  • 肛門を締める(おしっこを途中で止めるような感じです)
  • そのままキープする
  • 力を抜く
  • これを繰り返します

最初は3秒キープから始めて、慣れてきたら少しずつ伸ばして10秒を目指してください。いきなり10秒はきついので、ほかの場所に力が入ってしまいます。

締めた時間と同じくらい、しっかり力を抜くことも大事です。締めっぱなしにはしないでください。

10回を1セットとして、1日3セットくらいが目安です。

気をつけてほしいこと

  • 息を止めないでください。声に出して数えると防げます
  • お腹・太もも・お尻に力を入れないでください。ここでつまずく方がいちばん多いです。力が入っているのは、締めている場所だけのはずです

道具もお金もいりません。もし何かひとつやるなら、私はこちらをおすすめします。

🍀 詳しい人に出会えたら、ラッキーです

最後に、正直なところを書きます。

骨盤ケアにはいろんな考え方があって、正直どれがいいとは一概に言えません。私が勉強不足なだけかもしれません。でも、それが今の私のレベルです。

ただ——たくさん勉強して、骨盤に詳しい助産師は、ちゃんといます。

そういう方の話を聞いていて思うのは、骨盤に直接アプローチしていないということです。見ているのは、

  • 全身の筋肉の使い方
  • 姿勢の整え方
  • 呼吸のしかた

つまり体全体を見ているのです。「骨盤をこうすれば治る」ではなく、「体の使い方を変えていく」という考え方です。

もし探すなら、「骨盤を矯正します」と言う人より、「体の使い方を教えてくれる人」のほうがいいのかなと思っています。

そういう人に出会えたら、ラッキーです。

📝 まとめ

  • 骨盤は「開いて閉じる」のではなく「ゆるむ」もの。産後の腰痛の原因のひとつです
  • 骨盤ベルトの効果は、研究でもはっきりしていません。悪いものではありませんが、根拠は弱いです
  • 「とりあえずベルト」は簡単だからやっていること。根本的な解決ではありません
  • 卒業の時期まで伝えられないなら、意味がないと思っています
  • 根拠がはっきりしているのは骨盤底筋のトレーニング。道具もお金もいりません
  • 骨盤に詳しい人は、骨盤だけを見ていません。体全体の使い方を見ています

「これが正解です」と書けなくて、すみません。でも分からないことを分かったふりで書くよりは、そのまま書いたほうがいいと思いました🌷

産後の尿もれについては、こちらにくわしく書いています。
▶ 無痛分娩のあと尿が出ない・尿漏れする?産後の排尿トラブルを現役助産師が正直に解説

産後の腰痛については、こちらに書いています。
▶ 無痛分娩で腰痛が残るって本当?現役助産師が「よくある誤解」を正直に解説します

👉 産後や赤ちゃんのことは、ほかにも記事を書いています。全部まとめたページはこちらです。
【産後・育児ガイド】ママの体・母乳・赤ちゃんのこと|現役助産師がまとめました

この記事の感想やご意見は、コメントで聞かせてもらえるとうれしいです😊(個別の医療相談にはお答えできませんので、心配なことは必ずかかりつけの産院にご相談くださいね)

助産師Fujiちゃん

助産師/看護師。関西出身、関東在住。看護師・助産師の免許を取得後、産婦人科の臨床現場で18年間、たくさんの妊婦さん・ママたちに寄り添ってきました。現在は無痛分娩を行うクリニックに勤務中。プライベートでは6人の子どもを出産し、子育て中です。病院の限られた時間では伝えきれない「本当に知ってほしいこと」を、現場の本音とともに発信しています。

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