無痛分娩だと吸引分娩になりやすい?現役助産師が実感と研究の両方を正直に解説

無痛分娩

無痛分娩を考えている方から、こう聞かれることがあります。「無痛だと、吸引分娩になりやすいんですか?」

正直に答えます。私の実感では、明らかに多いです。特に初産の方。

ただ、研究を調べてみると、私の実感とは違う結論が出ていました。そこも隠さずに書きます。

📌 まず、吸引分娩・鉗子分娩とは

赤ちゃんがなかなか出てこられないときに、器械を使って外から引き出してあげるお産のことです。

  • 吸引分娩:赤ちゃんの頭にカップを吸いつけて引く
  • 鉗子分娩:スプーンのような器械で赤ちゃんの頭をはさんで引く

どちらもママがいきむタイミングに合わせて引きます。器械だけで引っぱり出すわけではありません。

🏥 私が現場で見ていること

無痛分娩では、吸引や鉗子になる方が明らかに多いと感じています。とくに初産の方です。

理由として、現場で感じているのは主にこの3つです。

  • いきんでも、赤ちゃんがなかなか降りてこない
  • 赤ちゃんの向きがよくない(回旋異常)
  • お産が長引いて、赤ちゃんの心音が不安定になってくる

❸の場合は、お産を早く終わらせる必要があるので、器械を使う判断になります。

📖 ところが、研究では違う結論が出ています

世界中の研究をまとめた大きな報告(コクラン・レビュー)では、無痛分娩をすると吸引・鉗子は約1.4倍に増えるとされています。ここまでは私の実感と同じです。

ところが、2005年以降の新しい研究だけを取り出すと、その差が消えます。「今どきのやり方の無痛分娩なら、吸引・鉗子は増えない」というのが、いまの世界の見方です。

理由は麻酔の濃さだと考えられています。昔は濃い麻酔を使っていたので足に力が入らず、いきめませんでした。今は薄い麻酔を使うので、いきむ力が残るのです。

🤔 なぜ、私の実感と研究がズレるのか

正直に言うと、なぜズレるのかは分かりません。ただ、思いあたることが3つあります。

  • 研究の多くは海外のものです。日本では日にちを決めて陣痛を起こす計画無痛が多く、促進剤を使うことも珍しくありません。同じ「無痛分娩」という言葉でも、中身が違います
  • 吸引や鉗子に対する考え方は、産院や医師によって違います。同じ場面でも「もう少し待とう」と考えるか、「そろそろ器械を使おう」と考えるかは分かれます
  • そして何より、これは私が自分の職場で見ている範囲の話です。日本全体でどうなのかは、私には分かりません

なので、「無痛にしたから吸引になった、失敗した」と自分を責める必要はまったくありません。

✅ 帝王切開は、増えません

まず、研究の結論から。

無痛分娩にしても、帝王切開になる確率は上がりません。
ここは研究でも一致しています。赤ちゃんのアプガースコア(生まれた直後の元気さの点数)にも差はありません。「無痛にすると帝王切開になりやすい」という話を見かけたら、それは古い情報です。

ただし、これは「帝王切開にならない」という意味ではありません。
ここは知っておいてほしいところです。

お産の途中で、いろんな問題が発生することがあります。
吸引分娩や鉗子分娩ができる状態ではない(逆に危険)と判断されれば、帝王切開に切り替わります。

これは無痛分娩でも自然分娩でも同じです。

「全体の割合としては変わらない」ことと、「自分は帝王切開にならない」ことは、別の話です。
無痛分娩を選んでも、途中で帝王切開になる可能性はあります。
そこは知ったうえで選んでほしいと思っています。

💪 吸引にする前に、こうしています

ここから先は、あくまで「私の職場ではこうしている」という話です。無痛分娩をしている産院すべてが同じではないので、そのつもりで読んでください😊

できるだけ器械を使わずに済むように、まずこういうことをします。

  • 赤ちゃんの向きがよくないときは、ママの体の向きを変える
  • それでも直らなければ、手で赤ちゃんの向きを直す(用手回旋)。これでよくならないこともあります
  • いきみ方の練習をして、しっかりいきんでもらう

麻酔については、私の職場では量を減らすことはしません。
ただ、なるべく追加もしないようにすることはあります。

痛みがつらくなってきて、ママが追加を希望されたときは、「追加するといきみにくくなって、お産が長引いたり、吸引・鉗子になる可能性が高くなります」とお伝えしたうえで、ご自身に選んでもらう事もあります。

なお、施設によっては、いきむ時期に麻酔をいったん止めるところもあるそうです。
ここは本当に産院ごとに違います。

😱 ママ本人は、痛いの?こわいの?

麻酔が効いていれば、痛くありません。これは無痛分娩の大きな利点です。

ただし2つ、正直に書いておきます。

  • 産後の痛みは、つらくなるかもしれません。器械を使うと傷が大きくなる傾向があるためです
  • 「こわかった」と言われることはあります。痛みではなく、まわりの雰囲気です。急ぐ場面では人が増えてバタバタするので、それがこわく感じられるのだと思います

もし不安なら、「何をしているのか声に出して教えてほしい」と、あらかじめ伝えておくといいと思います。

👶 赤ちゃんはどうなりますか?

ここがいちばん気になるところだと思います。

吸引分娩の場合

  • カップを当てたところにこぶができます。これは数日で消えます
  • ときに頭血腫(頭のこぶに血がたまった状態)になることがあります。この場合は数週間残ります
  • 頭血腫があると、黄疸が強く出ることがあります。血が体に吸収されるときに、黄疸のもとになる物質が増えるためです

鉗子分娩の場合

  • 器械の当たったあとが赤くなったり、あざになったりすることが多いです。耳の近くや上あごのあたりによく出ます
  • 目にかかることもあり、その場合は眼科の医師に診てもらいます

見た目のインパクトは正直あります。でもこぶもあざも、時間がたてば消えるものです。

まれに、もっと注意が必要な出血が起きることもあります。
だから産院では、生まれたあとの赤ちゃんの頭の様子や、飲み方・元気さをよく見ています。
「見た目が気になるけど先生からは何も言われない」ときは、診たうえで問題なしと判断されている、ということです😌

🩸 ママの体への影響

器械を使うと、会陰の傷が大きく、深くなる可能性があります。出血も多くなることがあります。

ただし絶対にそうなるわけではありません。浅く済む方もたくさんいます。

✂ 鉗子分娩は、産院によってかなり違います

じつは鉗子分娩をしていない産院も多いです。私自身、今のクリニックで初めて見ました。それまで働いてきたところでは、していませんでした。

地域によっても差があるようです。以前働いていた関西では、鉗子は「昔のやり方」という雰囲気が強いと感じました。

今の職場では、吸引では難しいと判断されたときに鉗子を使うことが多いです。

💬 それでも、無痛分娩を選んでいい?

私は、選んでいいと思っています。

ただ、これだけは知っておいてほしいと思っています。

「なるべく吸引や鉗子にはしたくない」とおっしゃる方は多いです。その気持ちはよく分かります。でも無痛分娩を選ぶということは、その可能性が比較的高くなる、ということでもあります。

知らずに当日を迎えて驚くより、「そうなることもある」と知ったうえで選んでほしいのです。それが納得のいくお産につながると思っています。

✅ まとめ

  • 私の実感では、無痛分娩だと吸引・鉗子は明らかに多い。特に初産の方
  • ただし研究では、今どきの薄い麻酔なら増えないとされている。実感とズレがあります
  • 帝王切開の割合は増えません。ただし、お産の途中で帝王切開に切り替わることはあります
  • 器械を使う前に、体位を変えたり、赤ちゃんの向きを直したり、いきみ方の練習をします(私の職場の場合)
  • 赤ちゃんのこぶは数日、頭血腫は数週間で消えます。鉗子のあざも消えます
  • ママの傷は大きくなる可能性があります。産後の痛みはつらいかもしれません
  • 吸引になっても、無痛を選んだせいだと自分を責めないでください

こわい話に読めたかもしれません。でも「知らないまま驚く」のと「知ったうえで選ぶ」のとでは、まったく違います。

知って納得して臨んでもらえたら、うれしいです🌷

👉 無痛分娩について、ほかにも記事を書いています。全部まとめたページはこちらです。
【無痛分娩ガイド】現役助産師が答えます|費用・流れ・不安のすべて

この記事の感想やご意見は、コメントで聞かせてもらえるとうれしいです😊(個別の医療相談にはお答えできませんので、心配なことは必ずかかりつけの産院にご相談くださいね)

助産師Fujiちゃん

助産師/看護師。関西出身、関東在住。看護師・助産師の免許を取得後、産婦人科の臨床現場で18年間、たくさんの妊婦さん・ママたちに寄り添ってきました。現在は無痛分娩を行うクリニックに勤務中。プライベートでは6人の子どもを出産し、子育て中です。病院の限られた時間では伝えきれない「本当に知ってほしいこと」を、現場の本音とともに発信しています。

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