自然分娩から無痛に切り替えるのは「負け」じゃない

無痛分娩

「私、痛みには強いんで、自然で産みます!💪」

そう言って入院してこられた初産の方が、3時間後にナースコールで——

「やっぱり無痛にしたいです」

現場では、本当によくあることです。そしてまったく悪いことではありません。

📊 「いけそうなら自然で」の人は、ほぼ全員が切り替えます

バースプランや外来の面談で、こうおっしゃる方がいます。

「いけそうなら自然で産むけど、無理そうなら無痛に切り替えます」

私の実感では、こう言っていた方はほぼ100%、無痛に切り替えます。

「できたら自然で」くらいの気持ちでは、無痛ができる環境にいると、簡単に崩れます。
陣痛はそれくらい痛いということです😫

でも——そりゃそうでしょう、という感じです。責める気持ちはまったくありません。

😫 切り替えるとき、みなさんこう言います

「やっぱり無痛にしたいです」——この言い方をされる方が多いです。

そのときの様子は、「申し訳ない」「負けた」というより、「つらすぎて無理」「早くこの痛みを取りたい」という感じの方がほとんどです。

切り替えるタイミングもさまざまで、意外と早い段階で言われる方もいれば、子宮口6〜7センチまで頑張ってから、という方もいます。

ただ、たまに「負けた」とおっしゃる方もいます。

その方に伝えたいことを、この記事の最後に書きます。

🌸 切り替えたあと、みなさん笑顔になります

麻酔が効いてくると、🌼お花畑🌼のようになる方が多いです。
痛みから解放されて、表情がふっとゆるみます。

そして、よく言われるのがこの一言。

「もっと早くすればよかった」

📖 「早く無痛にすると、お産が進まなくなる」は本当?

「もっと早く」と聞くと、こう思う方がいるかもしれません。
「でも、早く麻酔を入れるとお産が進まなくなるんじゃないの?」

これは否定されています。

15,752人を対象にした研究をまとめたものがあります。子宮口4センチより前に始めたグループと、4センチ以降に始めたグループを比べたものです。

  • 帝王切開になる割合:差なし
  • 吸引・鉗子分娩になる割合:差なし

結論として、「本人が希望するなら、早めに始めるほうがよさそうだ」とされています。

つまり「まだ早いから我慢しなきゃ」と思う必要はありません。つらければ、言ってください。

🤔 でも現場では「もう少し待ったら?」と言われます

ここは隠さずに書きます。研究の話と、現場のやり方は、少し違います。

たとえば子宮口1センチの段階で「無痛にしたい」と言われたとき——私の職場では、「もう少し開くまで頑張ったら?」と声をかける助産師が多いです。お医者さんの中にも「まだ前駆陣痛だからダメ」という方がいます。

矛盾しているようですが、実は別の話をしています。

さっきの研究で「早い」とされているのは子宮口4センチ未満ですが、これはすでに陣痛が来ている方が対象です。「まだ前駆陣痛で1センチ」という段階は、そもそも研究に含まれていません。

そして現場が慎重になるのには、理由があります。麻酔の時間が長くなると、熱が出やすくなるからです。

研究では、麻酔の時間が6時間未満なら7%、18時間を超えると36%の方に発熱が起こるとされています。
▶ 無痛分娩で熱が出るのはなぜ?産後の発熱と赤ちゃんへの影響を現役助産師が解説

お産が始まる前に麻酔を入れてしまうと、そこから本陣痛が来て、生まれるまでずっと麻酔が続きます。「待ったら?」は、意地悪で言っているのではありません。

まとめると、こうなります。

  • 陣痛が来ているなら、早めでも大丈夫。我慢しなくていいです
  • まだお産が始まっていない段階なら、少し待つほうがいいことがあります

その判断は産院がしてくれます。「待って」と言われたら、そういう理由があるんだなと思ってもらえたらと思います。

⏰ ただし「もう遅い」ということはあります

切り替えられないタイミングは、あります。

明確な締め切りがあるわけではありませんが、子宮口が全部開いていて、赤ちゃんもしっかり下がっていて、いきんだほうが早く生まれる——そういう状況では、私はおすすめしていません。

理由はこれです。

  • かえって時間がかかることがある
  • いきむ力が入らなくなって、吸引分娩になることがある
  • 結局、痛みが取りきれないまま出産になることがある

処置自体はできますし、それでもと希望されればやります。
ただ「楽になるはずが、そうならない」可能性が高い時期がある、ということです。

🚨 経産婦さんは、特に気をつけてほしい

ここから先は、私の職場でのやり方です。産院によって違うと思います。

2人目以降の方は、進み出すと一気に進みます。そのため「無痛が間に合わない」ということが、たまに起こります。

なので「自然のつもりだけど、場合によっては無痛にするかも」という経産婦さんに対しては、こうしています。

  • 前回のお産が短かった方には、「間に合わないかも」と前もってお伝えする
  • まだ余裕がありそうでも、進み出したと判断したら「無痛にするなら今だよ」と早めに声をかける
  • 意思決定を、早めに確認しておく

「迷っているうちに間に合わなかった」——これがいちばん残念なので、こちらから先に聞くようにしています。

📖 マンガで描いてみました

この記事の内容を、マンガにしてみました。私が描いています🤣

自然分娩から無痛分娩に切り替える場面のマンガ 1コマ目
自然分娩から無痛分娩に切り替える場面のマンガ 2コマ目
自然分娩から無痛分娩に切り替える場面のマンガ 3コマ目
自然分娩から無痛分娩に切り替える場面のマンガ 4コマ目
自然分娩から無痛分娩に切り替える場面のマンガ 5コマ目
自然分娩から無痛分娩に切り替える場面のマンガ 6コマ目
自然分娩から無痛分娩に切り替える場面のマンガ 7コマ目
無痛分娩の麻酔が効いて「もっと早く無痛にすればよかった」と笑顔になる場面のマンガ

職場では、このパターンを通称「ギブ無痛」と呼んでいます(笑)

私の頭の中では、立ち泳ぎで「まだ頑張ります!」と叫んでいるイメージです。でも30分後には「無痛にします!」と両手を上げてギブアップ。

ここまでよく頑張ったー!!と、浮き輪を投げて褒めてあげたくなります。

そして麻酔が効いたあと、「もっと早く無痛にすればよかった〜!」と、まるで温泉から上がったあとの感想みたいに言われるんです(笑)

💭 「負けた」と思っている方へ

最後に、助産師として思っていることを書きます。

実のところ、自然分娩を希望していた方が無痛に切り替えるとき、私の中にはちょっと残念な気持ちと、仕方ないかという気持ちが半々あります。

個人的には、自然分娩がいちばんトラブルの少ないお産だと思っているので、頑張ってほしい気持ちがあるんです。

でも——あの痛みから逃れたいという気持ちも、よく分かります。

私自身、22歳のときの出産では、呼吸法も知らないまま陣痛に絶望していました。

もしあのとき「いつでも無痛にできるよ」と言われていたら、私はすぐ飛びついていたと思います笑。

▶ 助産師の下手くそ出産体験記|まだ助産師になる前、22歳のお産の話

だから、切り替えた方に「負けた」なんて思ってほしくありません。そこまで頑張ったということです。

そして——無痛にできる環境なのに、自然で産みきる方(特に初産の方)は、本当にすごいと思っています。心から「よく頑張った」と思います。

どちらも、すごいことなんです。

✅ まとめ

  • 「いけそうなら自然で」の方は、ほぼ全員が切り替えます(私の実感)。悪いことではありません
  • 切り替えるときは「つらすぎて無理」という方がほとんど。「負けた」と思う必要はありません
  • 「早く入れると進まなくなる」は否定されています。15,752人の研究で、帝王切開も吸引分娩も差がありませんでした
  • ただし子宮口が全開でいきんだほうが早い状況では、おすすめしません
  • 経産婦さんは間に合わないことがあります。迷っているなら早めに伝えてください

つらいときは、我慢せずに言ってくださいね🌷

無痛と自然で迷っている方は、こちらもどうぞ。
▶ 無痛分娩なのに痛かった!その理由を現役助産師が正直に解説
▶ 「計画無痛分娩」と「オンデマンド無痛分娩」どう違うの?

👉 無痛分娩について、ほかにも記事を書いています。全部まとめたページはこちらです。
【無痛分娩ガイド】現役助産師が答えます|費用・流れ・不安のすべて

この記事の感想やご意見は、コメントで聞かせてもらえるとうれしいです😊(個別の医療相談にはお答えできませんので、心配なことは必ずかかりつけの産院にご相談くださいね)

助産師Fujiちゃん

助産師/看護師。関西出身、関東在住。看護師・助産師の免許を取得後、産婦人科の臨床現場で18年間、たくさんの妊婦さん・ママたちに寄り添ってきました。現在は無痛分娩を行うクリニックに勤務中。プライベートでは6人の子どもを出産し、子育て中です。病院の限られた時間では伝えきれない「本当に知ってほしいこと」を、現場の本音とともに発信しています。

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