「無痛分娩をすると熱が出ることがある」——そう聞いて、不安になった方もいると思います。
結論から言うと、これは本当です。でも、その多くは感染症の熱ではありません。
無痛分娩の現場で、毎日のように体温計を握っている助産師の立場から、なぜ熱が出るのか、そのとき私たちが何を見ているのか、そして赤ちゃんはどうなるのかを、正直にお話しします。
🌡️ 無痛分娩で熱が出るのは、めずらしくない
研究では、無痛分娩をした人の15〜25%に発熱が見られると報告されています。4〜5人に1人くらい、という感じです。
しかも、初めてのお産の方に多いという特徴があります。報告によって幅はありますが、初産の方では11〜33%、2人目以降の方では4%程度と、はっきり差が出ています。
これは「初産の方は体が弱い」という意味ではありません。次に説明する理由と関係しています。
⏱ 麻酔の時間が長いほど、熱は出やすくなる
ここが大事なところです。
お産にかかった時間で分けたデータでは、6時間未満だと7%、18時間を超えると36%まで上がります。だいたい6時間を超えたあたりから、はっきり増えてくると言われています。
初産の方に多いのも、これで説明がつきます。初めてのお産は時間がかかりやすいからです。
私の実感とも一致しています。無痛にしてから長時間になるほど、熱が出る方は増える印象です。
つまり「無痛にしたから熱が出る」というより、「お産が長引くと熱が出やすい」ほうが、実感に近いです。
🔍 なぜ熱が出るの?ばい菌のせいじゃないの?
ここがいちばん誤解されているところです。
この熱は、ばい菌が入って出る熱ではなく、体の中で起きている「炎症反応」による熱と考えられています。体が何かに反応して、結果的に体温を上げてしまっている状態です。
もうひとつ、麻酔をすると体温を調節するしくみが少し変わることも関係していると言われています。汗をかいて熱を逃がす働きが鈍くなるためです。
おもしろいのは、同じ麻酔でも、陣痛のない予定帝王切開の方には、この熱はほとんど起きないということです。
つまり、麻酔だけが犯人ではなく、「陣痛が続いていること」と「麻酔」の組み合わせで起きている——それが今のところの考え方です。原因は、まだ完全には解明されていません。
😷 現場でいちばん難しいのは「感染との区別」
正直に言うと、私たちがいちばん神経を使うのはここです。
子宮の中に感染が起きているときにも、同じように熱が出ます。体温計の数字だけを見ても、どちらなのかは分かりません。
だから熱の数字だけでは判断しません。私が確認しているのは、たとえばこんなことです。
これらを合わせて、「感染の可能性が高いのか、そうでなさそうか」を見ています。
「熱が出た=すぐ危険」でもないし、「よくあることだから大丈夫」でもない。どちらとも決めつけずに見続ける、というのが実際のところです。
🏥 熱が出たとき、現場ではこう動いています
ここから先は、あくまで「私はこうしている」という話です。無痛分娩をしている産院すべてが同じようにしているわけではないので、そのつもりで読んでください。
私の職場では、無痛分娩中の体温は2〜3時間ごとに測っています。そして体温に応じて、だいたいこんな流れで動いています。
とはいえ、きっちりしたマニュアルがあるわけではありません。そのときのお母さんと赤ちゃんの様子を見ながら判断しています。
🍼 じつは、産後のほうが熱は出ています
ここは、ネット上でほとんど語られていないことなので、正直に書きます。
お産の前に38度を超える方は、私の実感ではそこまで多くありません。むしろ多いのは、産んだあとです。
産後2時間以内に38度を超える方は、かなりいます。体感では半分以上です。
研究のほとんどは「お産の最中の熱」を調べたもので、産後の体温がどう動くかは、あまり扱われていません。でも実際にお産をするお母さんにとっては、産み終わってホッとしたあとに熱が出るほうが、よほど驚くはずです。
実際に産後の体温が高かったとき、私は「無痛の影響で熱が高くなることがありますよ」とお伝えするようにしています。それを知らないと、「感染したのかも」と不安になってしまうからです。
産後に熱が出たら、どうするの?
基本的には、特別なことはしません。
お産の前にした血液検査で、炎症の数字がはっきり高かった場合は、感染を疑って、産後も抗生剤を使う指示が出ることがあります。でも、そうではなく麻酔による熱の可能性が高いときは、様子を見るだけです。
そして実際、産後6時間ほどゆっくり過ごせたら(眠れたら)、熱は下がっていることがほとんどです。
👶 赤ちゃんへの影響は?
ここがいちばん気になるところだと思います。
お母さんの体温が高いと、赤ちゃんも体温が高い状態で生まれてくることがあります。
それでも、呼吸に問題がなく、体温が高いだけなら、特別なことはしません。体温が高ければ、下がるように保温のしかたを工夫します。たいていは生後2時間以内に落ち着きます。
それでも下がらない場合は、医師に報告して、保育器で様子を見るか、より設備の整った病院へ搬送することもあります。私の職場はクリニックなので、様子を見すぎない——これは意識しているところです。
ただし、これはあくまで「設備の限られたクリニックでの対応」です。大きな病院やNICU(新生児集中治療室)のある施設では、必要に応じてもっと早い段階で赤ちゃんの採血をしたり、点滴をしたりすることもあると思います。その施設で何ができるかによって、赤ちゃんへの対応は変わってきます。
「熱が出た=赤ちゃんが危ない」ではありません。ただ、放っておいていいものでもない。だから測るし、見ています。
💭 それでも、無痛分娩は選んでいい?
私は、選んでいいと思っています。
熱の多くは感染ではないこと。
そして、熱が出ることを知っていて、ちゃんと見ているスタッフがいれば、見逃されにくいこと。
この2つがあるからです。
✅ まとめ
熱が出ると聞くと不安になると思います。でも、想定外のことではありません。
知らずに驚くより、知って安心して臨んでもらえたらうれしいです🌷
副作用の全体像(かゆみ・震え・吐き気・血圧低下)は、こちらの記事にまとめています。
▶ 無痛分娩の副作用って何がある?かゆみ・発熱・震え・吐き気を現役助産師が正直に解説
👉 無痛分娩について、ほかにも記事を書いています。全部まとめたページはこちらです。
【無痛分娩ガイド】現役助産師が答えます|費用・流れ・不安のすべて
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