「無痛分娩をすると、一生腰痛が残るらしいよ」
ネットで「無痛分娩 腰痛」と検索すると、こういう話がたくさん出てきます😟
正直にお話しすると、私自身は「腰痛が残るって聞いたので不安です」と直接ご相談を受けたことは、ほとんどありません。でも、検索するとこの話は本当によく出てきますし、「背中に針を刺すのが怖い」という理由で無痛分娩をためらう方は実際にいらっしゃいます。
でもこれ、研究ではほぼ否定されている「俗説」なんです。今日は、どうしてこの話が広まったのか、そして産後の腰痛の本当の原因について、現役助産師のFujiちゃんが正直にお話しします🌿
😌 結論:無痛分娩そのものが長引く腰痛の原因になる、とは言えません
先に結論をお伝えします。
「硬膜外麻酔をした人」と「していない人」で、産後に残る腰痛の割合を比べた研究がいくつもありますが、はっきりした差は出ていません。
つまり、無痛分娩をしたから腰痛になる、という因果関係は確認されていない、ということです。
では、なぜこんなに強く信じられているのでしょうか?
🔍 なぜ、この話が広まったの?
理由は大きく3つあると考えられています。
- もとになった調査が古く、方法にも偏りがあった……30年以上前の「あとから思い出して答えるアンケート」がきっかけです。腰が痛い人ほど「そういえば背中に針を刺したな」と思い出しやすい、という偏りが出てしまいます
- 産後の腰痛は、そもそもとても多い……自然分娩でも帝王切開でも腰は痛くなります。でも無痛分娩をした人だけは、痛くなったときに「あの麻酔のせいかも」と原因にたどり着いてしまうんです
- 「刺したところの痛み」と「腰痛」が混ざっている……この2つは、場所も性質もまったく別のものです
✅ 硬膜外麻酔で「本当に」起こる背中の痛み
とはいえ、背中に管を入れるわけですから、まったく何もないわけではありません。実際にあるのはこちらです。
これは針を刺したことによる、局所的な打ち身のようなものです。背中の「ここ」と指で指させるくらい狭い範囲なのが特徴。
一方、みなさんが心配している腰痛は「腰全体が重だるい」「立ち上がるときに痛い」「抱っこすると痛い」というタイプですよね。これは刺入部の痛みとは、場所も性質もまったく別のものなんです。
私が実際にやっていること
入院中に「刺したところが痛い」と言われることは、私も何度か経験があります。そのたびに、必ず背中を直接見せてもらって、こういう点を確認しています。
ひとつでも当てはまれば、その場で医師に報告します。ただ、実際にはほとんどの場合、見ても何も問題がありません。押すと少し痛い、という程度で、数日のうちに自然に軽くなっていきます。
逆に言うと——ここは正直にお伝えしておきたいのですが——数週間ずっと痛みが続いているとしたら、それは「よくあること」では片づけません。私だったら、一度みてもらってくださいとお伝えします。
痛みが長引くこと自体がすぐ危険というわけではありません。ただ、刺入部の感染や血腫など、まれだけれど早く気づきたいものがあるので、自己判断で様子を見ないでほしいんです。
🤱 じゃあ、産後の腰痛の本当の原因は?
現場で見ていて、原因はほぼこの5つに集約されます。
① ホルモンで関節や靭帯がゆるむ
妊娠中は、赤ちゃんが産道を通れるように骨盤まわりの関節や靭帯をゆるめるホルモンが出ています。ゆるんだ関節は不安定なので、その分まわりの筋肉ががんばって支えることになり、腰に負担がかかります。
このゆるみは産後すぐには元に戻りません。数か月かけて少しずつ戻っていきます。
② 妊娠中についた「反り腰」のクセ
お腹が大きくなると、バランスをとるために自然と腰を反らせた姿勢になります。10か月続けたこの姿勢のクセは、産後すぐには抜けません。
③ お腹の筋肉が伸びきっている
見落とされがちですが、これが大きいです。
腰は、背中の筋肉だけで支えているわけではありません。お腹側の筋肉と一緒に、前後で挟んで支えているんです。妊娠中にお腹の筋肉が大きく引き伸ばされると、この「前からの支え」が効かなくなり、背中側だけに負担が集中してしまいます。
④ 授乳と抱っこの姿勢
産後の腰痛で、実は一番大きいのがこれだと思っています。
新生児は3kg程度ですが、それを1日中、同じ姿勢で支え続けます。腰が痛くならないほうが不思議なくらいです。
⑤ 睡眠不足と、休めないこと
痛みは、疲れているときほど強く感じます。細切れの睡眠が続き、自分の体をいたわる時間がまったくない——これも立派な原因です。
🌿 産後の腰痛を、少しでもラクにするために
特別なことより、毎日くり返す動作を変えるほうが効きます。
骨盤ベルトを使う方も多いですが、締めつけすぎると逆にお腹の筋肉が働かなくなることがあります。使うときは1か月健診などで、実際に体を見てもらいながら相談するのがおすすめです。
そして、これがいちばん言いたいことなんですが——誰かに頼ってください。抱っこを代わってもらう10分が、どんなストレッチよりも効きます。
🏥 これは「様子見」ではなく受診してください
ほとんどの産後の腰痛は、時間とともに落ち着いていきます。でも、次のようなときは別です。すぐに受診してください。
これらはとてもまれですが、放っておいてはいけないサインです。「大げさかな」と思っても構いません。分娩した施設か、整形外科に相談してください。
💬 Fujiちゃんの本音
私は外来で「腰痛が残るって聞いて…」と言われた経験はほとんどありません。だから今回、この話を調べてみて「そんな噂が広まっていたんだ」と、正直おどろきました。
でも、いま妊娠している方はスマホで検索しますよね。私たちが外来で聞かれないだけで、誰にも言えないまま不安を抱えている方がいるのかもしれない——そう思ってこの記事を書きました。
もし、そこで無痛分娩をあきらめてしまっているとしたら、とてももったいないです。
無痛分娩には、きちんと知っておくべきデメリットもあります。それは正直にお伝えします。でも、あるかどうかもはっきりしない「一生の腰痛」に怯えて選択肢を捨てる必要はありません。
📝 気になることは、うわさ話ではなくその病院の医師・助産師に直接聞いてください。
「腰痛が残るって聞いたんですが」と聞いていただいて、まったく構いません。むしろ、そう言ってもらえたほうが説明しやすいです😊
✅ まとめ
産後の腰痛は、あなたの体が10か月かけて赤ちゃんを育てたことの結果です。無理に「元通り」を急がず、まわりに頼りながら、少しずつ整えていってくださいね🌷
👉 無痛分娩について、ほかにも記事を書いています。全部まとめたページはこちらです。
【無痛分娩ガイド】現役助産師が答えます|費用・流れ・不安のすべて
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