無痛分娩のあとの頭痛「起き上がると痛い」なら要注意|現役助産師が解説

無痛分娩

産後、頭が痛い。

寝不足のせいかな、と思っていたけれど、起き上がると頭がガンガンして、横になるとスッとラクになる

もし無痛分娩や帝王切開で背中に麻酔をしていて、この痛み方をしているなら——それはただの寝不足の頭痛ではないかもしれません

今日は、あまり知られていない「硬膜穿刺後頭痛(こうまくせんしごずつう)」について、現役助産師のFujiちゃんが解説します🌿

😌 まず前提:産後の頭痛は、そもそもよくあります

こわい話から入る前に、安心してほしいことをお伝えします。

産後に頭が痛くなる方は、麻酔をしてもしなくてもたくさんいます。理由もはっきりしています。

  • 圧倒的な睡眠不足(3時間おきの授乳)
  • 水分不足(母乳をつくるのに水分をとられます)
  • 貧血(お産で出血しているので当然です)
  • ホルモンの急激な変化
  • 妊娠中に我慢していたカフェインを急にやめた/急に再開した
  • ずっと下を向いた授乳の姿勢による肩こり

これらは、休んで、水分をとって、少し体を動かせば落ち着いていくものがほとんどです。

でも、ひとつだけ。見逃さないでほしい頭痛があります。

💡 硬膜穿刺後頭痛(PDPH)ってなに?

背中に麻酔をしたあとに起こることがある、特徴的な頭痛です。

なぜ起こるの?

無痛分娩の麻酔は、背中の「硬膜外腔(こうまくがいくう)」という、とても狭いすき間に細い管を入れて行います。

この硬膜外腔のすぐ奥には、脳と脊髄をひたしている液体(脳脊髄液)が、硬膜という膜に包まれて入っています。

管を入れるときに、ごくまれにこの硬膜に小さな穴が開いてしまうことがあります。すると、そこから脳脊髄液が少しずつ漏れてしまう。

脳は本来、この液体に浮かんでクッションのように守られています。液体が減ると脳を支えるクッションが減って、頭の中の膜が引っぱられる——これが痛みの正体です。

「起き上がると痛い、横になるとラク」なのは、この仕組みのせいなんです。立つと重力で脳が下がって引っぱられるけれど、横になると引っぱりがなくなるから。

どのくらいの人に起こるの?

数字でお伝えします。

  • 処置のときに硬膜に穴が開いてしまうのは、およそ100人に1人くらい
  • 穴が開いた方のうち、実際に頭痛が出るのはその半分〜7割ほど
  • つまり、無痛分娩を受けた方全体で見ると1%あるかないか

とてもまれ、ということです。ただ「まれ=知らなくていい」ではありません。知らないと「産後の寝不足だ」と思い込んで、我慢し続けてしまうからです。

🔎 見分け方は、たったひとつ

むずかしい判断はいりません。体を起こしたときに変わるかどうか、これだけです。

  • 起き上がる・座る・立つと、頭痛が強くなる
  • 横になると、数分でスッとラクになる
  • 痛む場所は後頭部から首すじ、またはおでこのあたり
  • 首のうしろが張る、吐き気、耳鳴り、まぶしく感じる、音が聞こえにくい、といった症状を伴うことがある
  • 出はじめるのは、麻酔の処置から1〜2日以内が多い

いっぽう、寝不足や肩こりの頭痛は横になっても変わりません。ここが決定的な違いです。

もし思い当たるなら、「起きると痛くて、寝ると治まるんです」と、そのまま伝えてください
この一言で、私たちにはピンときます。
がんばって専門用語で説明する必要はまったくありません。

💊 どうやって治すの?

まず知っておいてほしいのは、多くの場合、1週間くらいで自然によくなっていくということです。開いた穴は自然にふさがります。

その間にできることは、こんなことです。

  • 横になって安静にする(起き上がると痛いので、無理をしない)
  • 水分をしっかりとる
  • カフェインをとる(頭痛をやわらげる効果があるといわれています)
  • 痛み止めを使う。授乳中でも飲めるお薬があるので、自己判断でやめずに相談してください

それでもよくならない、痛みが強くて赤ちゃんのお世話ができない——そんなときには、ブラッドパッチという治療があります。

自分の血液を少しとって、それを背中の硬膜外腔に注入し、血液のかたまりで穴にフタをするという方法です。効果が高く、多くの方がその日のうちにラクになります。

「また背中に針を刺すの?」と思うかもしれませんが、つらい頭痛を抱えたまま育児をするより、ずっといい選択になることがあります。

ただし、ブラッドパッチをするかどうかは、施設によって方針がちがいます。麻酔科の体制なども関わるので、「頭痛が出たら必ずブラッドパッチ」というわけではありません。

まずは鎮痛剤や安静で様子を見て、それでもよくならない場合に、できる施設へ紹介してもらう——という流れになることが多いです。

🏥 これは頭痛ではないかもしれません

ここはとても大事なところです。次の症状があるときは、PDPHではない、別のものの可能性があります。すぐに知らせてください。

  • 横になっても痛みがまったく変わらない、どんどん強くなる
  • 目がチカチカする、視界がぼやける、手足や顔がむくむ……産後の妊娠高血圧症候群のサインのことがあります。血圧を測ってもらってください
  • 熱がある、首が硬くて曲げられない
  • ろれつが回らない、手足が動かしにくい、けいれんした
  • 背中の刺したところが赤く腫れている、熱をもっている

特に2つめ。産後の頭痛で私たちがいちばん警戒しているのは、麻酔ではなく血圧です
産後に血圧が上がる方は本当にいらっしゃいますし、放っておくと危険です。
「頭が痛い」と言われたら、まず血圧を測る。それくらい大事なサインだと思ってください。

🩺 Fujiちゃんの現場から

ここからは、私が実際にやっていることをお話しします。

産後のママから「頭が痛い」と言われたとき、私が第一にすることは血圧を測ることです。頭痛の原因を考えるより先に、まず血圧。これは絶対です。

そのうえで、無痛分娩のあとなのか、帝王切開のあとなのかを確認します。どちらも背中に麻酔をしているので、PDPHの可能性が出てくるからです。

血圧が正常なら、次はこんなことを聞いていきます。

  • いつ痛いのか
  • 姿勢で変わるのか
  • もともと片頭痛持ちではないか

この「姿勢で変わるか」がやっぱり決め手で、PDPHのママはほとんどの方が「横になってるとマシになります」とおっしゃいます

頻度の実感もお伝えしておきますね。私の勤務先は無痛分娩と帝王切開を合わせて年間1000件以上のお産がありますが、PDPHになる方は1年に10人いるかいないか、という感覚です。

ちなみに、うちのクリニックではブラッドパッチはやっていません。頭痛が出たときの対応は、こんな流れです。

  • 鎮痛剤を使う
  • カフェインをとってもらう
  • カフェインの入った点滴をする
  • 安静にして、自然によくなるのを待つ

この対応で、私が担当してきた方はみなさん落ち着いていきました
ブラッドパッチまで必要になった方を担当したことはありません。

それだけ、ほとんどの方がここまでの対応で自然によくなっていく、ということだと思っています。

💬 よくある誤解

❌「無痛分娩をすると頭痛が残る」

⭕ 起こること自体がまれで、起きてもほとんどは一時的です。ずっと続くことは、さらにまれです。

麻酔にはきちんと知っておくべきリスクがあります。それは正直にお伝えします。

でも「まれに起こること」を「必ず起こること」のように怖がる必要はありません
知っておくべきなのは、リスクの大きさではなく、起きたときにどうすればいいかのほうです。

✅ まとめ

  • 産後の頭痛の多くは、寝不足・水分不足・貧血・ホルモンによるもの
  • ただし起き上がると痛くて、横になるとラクになる頭痛は、硬膜穿刺後頭痛(PDPH)かもしれない
  • 起こる確率は無痛分娩を受けた人の1%あるかないか
  • 多くは1週間ほどで自然によくなる。つらいときはブラッドパッチという治療がある
  • 横になっても変わらない頭痛、目のチカチカ、むくみがあるときは、麻酔よりも血圧を疑ってすぐ相談を

産後の体は、自分が思っているよりずっとがんばっています。
「これくらい我慢しなきゃ」と思わずに、おかしいと思ったら声に出してくださいね🌷

👉 無痛分娩について、ほかにも記事を書いています。全部まとめたページはこちらです。
【無痛分娩ガイド】現役助産師が答えます|費用・流れ・不安のすべて

この記事の感想やご意見は、コメントで聞かせてもらえるとうれしいです💐
(個別の医療相談にはお答えできませんので、心配なことは必ずかかりつけの産院にご相談くださいね)

助産師Fujiちゃん

助産師/看護師。関西出身、関東在住。看護師・助産師の免許を取得後、産婦人科の臨床現場で18年間、たくさんの妊婦さん・ママたちに寄り添ってきました。現在は無痛分娩を行うクリニックに勤務中。プライベートでは6人の子どもを出産し、子育て中です。病院の限られた時間では伝えきれない「本当に知ってほしいこと」を、現場の本音とともに発信しています。

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